今月の商人(あきんど)  
「名物商人」の人生の転機や地域の活動など、様々な一面をご紹介します。
私の店づくり〜ありのままの自然の姿を〜  安中市 農産物直売所 愛菜人 池澤 徹さん


池澤徹さんと妻の光子さん
学生時代に同じボランティア団体で活動
をしていて知り合ったというお二人。







野菜コーナー
地元安中産の商品もたくさん陳列されています。


脱サラをして直売所を開店されたそうですね。
 
11年前まで、電子機器メーカーの会社で技術職をやっていたのですが、体を壊してしまったため、仕事を辞めました。そんなときに、知り合いが農産物直売所を始めるにあたり誘いがあり、店長としてお店の立ち上げに関わりました。
 そうするうちに、自分の直売所のイメージが広がり「愛菜人」を開店しました。
 私にとって「農産物」とは季節の中で日々、生きていることを実感できる大切な「DNA」の塊なんです。この10年色々なことがありましたが、この職業で良かったと思っています。







■苦労された点はありますか。

 私達夫婦は栃木県出身です。いわば、安中に縁もゆかりもないよそ者が、地元の野菜を売る直売所を始めたわけですから、生産者がなかなか集まらず、お店を開けても売る野菜がない日がたびたびありました。 これではいけないと「東に西に」群馬県中、毎日飛び回り生産者を探しました。または、他の地域の直売所にお願いして品物を調達してもらいました。「生産者の顔」や、「群馬産」にこだわっていたので、4年くらいは「市場」抜きで考えていました。 
 当然、寝る暇もないほど、がむしゃらな毎日でした。夜中に吾妻の山奥の畑に大根抜きに行ったような事もあったんですよ。
 今になって思えば、色々な生産者の方、直売所の方と知り合えたことは、大切な財産となっています。
 そのほか、「はるなまちづくりネット」で活動していた時期に、高知元気者グループと知り合い、飛行機で高知に飛び、馬路村のゆず製品や海産物、四万十川の品々、みかんなどを2年ほど直送してもらったこともありました。
 そのほかに苦労したことといえば、時代の変化への対応ですね。4〜5年前くらいからお客様が変わりました。例えば、以前は泥付大根はよく売れましたけど、最近は「土がついているのは嫌だ」といって、敬遠されるようになりました。煙と臭いで部屋が汚れるから焼き魚はいやだ・・と同じことですね。
 それで、お店の中でお惣菜が作れるようにキッチンを作り、またお漬物も加工できるようにしました。
 毎日、「旬のメニュー」を工夫し、「おいしく」「安く」できるだけ添加物を使わない「安心な」お総菜や漬け物を作っています。お客様と作り方のやり取りなどができるのも嬉しいことです。


■「地産地消」にこだわっているとお聞きしました。
 
できるだけ地元のもの、群馬県産のものを扱うようにしています。
 県の「ぐんま地産地消推進店」にも認定されているんですよ。
「地産地消」というのは、地元でとれたものを食べる、消費するというだけではなく、一言でいえば、地元の農家の人たちの生活を保障し、地域の農業を育てていく「しくみ」作りなんですよ。残念ながら誰もそこまで考えていないようですね。
 また1%でも良いから未来に向けて食料自給率が上がっていくことを願っているんです。ちなみに、愛菜人のスローガンは、「未来に食(あかり)を! 地産地消で始まる農立日本」なんですよ。 ここで、食は燭(ショク。あかり)、農立は能率(ノウリツ)にかけているんです。
小さな子どもたちの「未来」のために!これからも訴え続けます。




■お店の一角にチャリティーコーナーがありますね。
 私は栃木県の僻地生まれ、大病を患ったため小中高はほとんど行かず、学校が大嫌いでした。しかし、高校三年のときの夏休み、母のガン発病を契機に一念発起、大学に進学しました。
 大学に入学すると、病弱でやせ細っていた自分へのコンプレックスと、ガンになった母親への思いから、ボランティア活動に積極的に取り組むようになりました。障害者や貧困者であっても人間は差別されるべきではない、公平、平等であるべきだと強く思いました。大学三年生の時には「全国10万人の交通遺児に進学の夢を!」をスローガンに「第6回全国学生交通遺児育英募金」の事務局長を務めたこともありました。今は、「交通遺児育英会」は財団法人となり、私が支援しているのはそこから分離した「あしなが育英会」です。病気、災害、自死(自殺)遺児達の支援団体(NPO)です。
 夫婦二人で、何かできることはないかなと、昨年の8月末に「あしながチャリティーショップ」を始めたんですよ。始めてから約1年、約40万円も寄附ができました。これは全て、品物を提供して下さった方々のおかげです。




■チャリティーショップ以外にも様々な取組をされていると聞きました。
 まずお店のチラシですが原稿から印刷まで全て私一人でやります。そして、表より裏が人気のチラシなんです。表は季節やその時々の懐かしい童謡歌等で始まり、特売情報などを載せています。裏は、地産地消の俳句募集や、カボチャの重さ当てなどお客さんと共通の話題、つながりを持つ内容で、常に語らいが出来るよう図ってきました。ただ最近では話をするのを嫌がるお客さんもいて、反応が少なくなりとても残念に思っています。
 さて、お百姓さんというのは、「百」のものを賄うから「百姓」と言われます。アイサイトでは、百に1をにプラスして、「野菜」のほかに人間の「若い人」を育てようと「101姓」(ひゃくいっしょう)・・「101(いちまるいち)運動」を始めました。レジの横に募金箱を設置したり、規格外の野菜(畑のガキ大将セール)の売上を「あしなが育英会」に寄附したりといったこともありましたね。
 それから「愛バック運動」ということで、「地球に愛を返そう!」をスローガンに、マイバック利用者への特典サービスや、サービススタンプ発行を行ってきました。変り種といえば、バラ農家の奥さんに講師をお願いして、フラワーアレンジメント教室を開いたこともありましたね。



お店の一角にあるチャリティーコーナー
衣類や雑貨等の不要品を無償で提供してもらい、
売ったお金を「あしなが育英会」に寄附しています。





「101運動」 
レジの横に設置された募金箱で寄附ができます。




             旬の野菜の漬け物 
愛菜人に行けば、そのときそのときの季節を体感することができます。




       
◆農
産物直売所 愛菜人 池澤 徹さんのページはこちら◆



■農産物直売所としての、今後の抱負をお聞かせください。

  いつまでも“食の語り部”でありたいと思っていますね。今は“おふくろの味”を知らない子どもが多いと思うんです。それが悲しいなと思います。安さと利便性だけを求めて、皆が同じものを食べているように思いますね。大きなお店に行けば、季節を問わず色々な野菜が入手できます。しかし、何が旬なのか、季節感など感じ取ることはできません。
 旬のものを食べる喜び、一年の待ちどおしさを、四季の中で体感できる環境を残していきたいなと思いますね。「淡々とした幸せ」と、自然の恵みを感じるとることができるお店でありたいなと願っています。
 今、子どもたちにではなく、若いお母さん達にこそ、「食育」の教育が必要ではないでしょうか。これから、朝晩に、「お母さん、おかわり!」という子どもたちの弾ける声があちこちで聞こえるようになったなら、最高に幸せだなと思いますね。
 また、対面販売の個人商店が減ってきていますが、独り暮らしの高齢者には決して良いことではありません。世間話をして楽しんで買い物をする。まず、「表に出ること、歩くこと、しゃべること、笑うこと」がお年寄りの健康には一番だと思います。一方、買い物に行けなくなった人はデリバリーで補えばいいとの意見もありますが、
そうすると、大切な四季の「営み」や、人と人との「共存」のなかで築いてきたつながり、「感謝」の気持ちなどが絶えてしまいます。今、それをつなぐことが、「商人」として私達に課せられた「使
命」かとも思っています。





■チャリティー活動における抱負はどのようなものでしょうか。
 チャリティーショップは、誰でもが社会貢献できるのです。提供していただいた品物がお金に変われば、そのお金が奨学資金となり、子どもたちが学校に行くことができます。
 また、“使えるものは使えるまで使う”ということで1つのエコ活動にもなります。
日本では馴染みの薄いチャリティーショップですが、イギリスなど、ごく当たり前に普及している国もあります。まず、アイサイトの落としたこの一滴のしずくが、群馬県中に広がっていけばいいなと思いますね。
 ■「今月の商人」     
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●取材を終えて●
 困っている人を助けたいという思いを持つ人は多くいても、その思いを実行に移せる人はほんのわずかであると思います。
 池澤さんのその行動力とパワーに尊敬の念を抱くと同時に、“支えてくれる女房がいるから”という奥様への感謝の気持ちに心あたたまる取材となりました。(横)